YUCACOシステムとは:What is

_________________

YUCACOシステムとは

日本大学理工学部建築学科 井口雅登 

 

YUCACOシステムは、Your(あなたの)Uniform(均一に)Conditioned(調整された)Air(空気の)Configuration(配置)System(システム)の頭文字をとった、住宅向けの全館空調システムです。

従来の住宅向けの全館空調システムは、いわゆるビル向けの空調設 備を応用した高機能な専用システムによるものが中心ですが、「より簡単に、より効率よく、より安価に」を目標に、豊かな住宅内の温熱環境を実現するため、下記の3つの思想をもって開発が進められました。

 

1. 高断熱住宅を前提とする

2. 高効率な汎用機器の活用する

3. なるべく簡易に空気を分配する


 システムの概念図
 システムの概念図

1. 高断熱住宅を前提とする

 

近年、省エネ意識の高まりから、日本の住宅でも高断熱化が進んでいます。住宅の高断 熱化が進めば、暖冷房に必要なエネルギーが減少するだけでなく、暖冷房機器の容量も小さくすることができます。

高断熱化の進展によって、部屋毎にエアコンを設置する必要がなくなり、10~15畳向けの壁掛けエアコン1台で、住宅全体の暖冷房に必要な熱を製造することが可能なのです。

YUCACOシステムは、高断熱住宅への導入の前提のもと、壁掛けエ アコン1台で住宅全体の暖冷房を行う全館空調システムです。

温熱環境を快適にするためにも高断熱化が求められます。暖冷房システムは、室温を維 持するために、室内から漏れ出す(外部から侵入する)熱の埋め合わせをしなくてはなりません。

断熱性能が低く、埋め合わせすべき熱が増えれば、気流速度や温度差の大きい温風や冷風が必要となり、乾燥や冷えなどによる快適性の低下を招くのはいうまでもありま せん。

また、室温が意図通りに維持されていても、断熱性能が低いことによる表面温度が原因で不快となることもあります。快適な温熱環境を実現するには、断熱性能を高めることが前提条件なのです。

 



2. 高効率な汎用機器の活用する

 

暖冷房に使用される機器は、効率が良いだけでなく、なるべく導入費用が小さく、さらにメンテナンスが容易であることが求められます。

YUCACOシステムは、一般に広く普及している汎用機器を空調システムに活用することで、これらの要求に応えようとしています。

汎用機器はメーカーの競争が激しく、効率が高い上に安価で、メンテナンスが容易と、三拍子そろった有用な機器です。

未来に亘って継続的に運用されるシステムを目指すには、居住者自身がメンテナンスを行えることや、故障時の取り換えが容易であることが重要となるでしょう。

 

一方、汎用機器は、全館空調のために開発されたものではないため、汎用機器をどのように設置するか、また組み合わせるかという点については、独自のノウハウが必要です。

YUCACOシステム研究会の発足以来、様々な試行錯誤がされてきましたので、研究会での 検討結果を参照していただきたいと思います。

・・

 



3. なるべく簡易に空気を分配する

 

壁掛けエアコン1台で、住宅全体の室温維持に必要な熱を作り出すことができれば、次に必要となるのは、製造された熱を住宅全体に偏りなく分配することです。

一般的な全館空調システムは、空気の通り道であるダクトによって温風や冷風を送り出して熱を分配しますが、十分なダクトスペースを設けることが困難な場合もあります。

YUCACOシステムのコンセプトは、「より簡単に、より効率よく、より安価に」ですので、なるべくダクトを少なくして床下などのデッドスペースを活用し、居室に吹き出された空気は廊下などを通してエアコンに循環させるという発想に至りました。

ダクトを少なくすればコストを抑えることも可能です。YUCACOという名称には床を利用するという意味も込められているのですが、床下を送風経路とすることで、床表面温度の向上を見込むことができ、合理的なシステムとなります。

 

日本では、住宅内で暑さや寒さ、温度差を感じることが、仕方のないことだと考えられていましたが、住宅内の快適性の低下のみならず、居住者の健康をも脅かす事態も発生しています。

全館空調によって実現される快適性や健康に配慮された温熱環境は、本来、居住者が享受すべき住環境だといえます。

YUCACOシステムは、このような温熱環境を「より簡単に、より効率よく、より安価に」実現するための全館空調システムなのです。

・・・

 



YUCACOシステムとは - Topへ

Photo: ©︎HATTORI Tetsuyuki